本当に偽ハラール?辛ラーメンに豚成分が含まれていた騒動

2017-08-13ハラール認証 / ハラール産業, マレーシア進出支援, インドネシア進出支援

Shin_Ramen_Package_Malaysia

インドネシアで販売されている辛ラーメンに、豚成分が含まれていた為に販売ライセンスが取消された、との報道がされました。これを受けて日本のまとめサイトには、「【偽ハラール】辛ラーメン」というようなまとめが作成されています。インドネシアで豚成分が含まれていたラーメンを販売したことから、ハラールの問題として捉えている方が多いようです。しかしこの問題は、本当にハラールの問題なのでしょうか?

ハラールで無くても流通できるマレーシア、インドネシア

マレーシアやインドネシアは、ムスリムだけでなく、キリスト教、仏教、ヒンズー教等の宗教を信仰する人々が、歴史的に長い時間をかけて共存してきた社会です。そのため、それぞれの宗教を尊重した法律や制度が、取られています。


現在、マレーシアとインドネシアでは、ハラール以外の食品でも流通が可能です。マレーシアには、豚肉を使った肉骨茶という名物料理があります。クアラルンプールやジャカルタでは、とんかつ屋やラーメン店も、正式に営業ライセンスを得ています。

辛ラーメン騒動は偽ハラール問題なのか?

マレーシアやインドネシアでは、豚成分を含んだ食品でも流通できるのです。
ではなぜ、今回の豚成分を含んだ辛ラーメンは、問題となったのでしょうか。インドネシアの英字新聞 THE JAKARTA POST に更に詳しい記事が出ています。


販売ライセンスを取消したThe Food and Drug Monitoring Agency (BPOM) は、次の様に述べています。

  • 豚成分が入った商品は、輸入業者がBPOMにライセンスを取得しようとした時に、発見された。
  • 輸入業者に対して、市場から商品を引き上げるように依頼した。
  • 輸入業者に対して、その為の時間を与えたが、何もしなかった。
  • 豚成分を含む商品には、消費者が判別できるように、外装に何らかの画像が表示されなければならない。
  • 店頭では、豚成分を含む商品は、それ以外の商品と区別して陳列されなければならない。

BPOMは、辛ラーメンの輸入業者に対して、インドネシアのレギュレーションに違反しているので修正するように求めた。しかし、一定期間の猶予を与えたが何の対応もしなかった。そのため、販売ライセンスを取消したということが真相の様です。豚由来の成分が入っていることは、販売ライセンスを取得した時に発覚したようですね。

今回、輸入業者が迅速に対応していれば、騒動にはなっていないと思われます。つまり、今回の辛ラーメン騒動は、ハラールではなくコンプライアンスの問題であったようです。

辛ラーメン騒動のマレーシアやインドネシアでの影響は?

マレーシアでは、「マクドナルドがハラールではない」という噂話が、何度も発生しては拡散しています。マレーシアのマクドナルドは、JAKIMハラール認証を取得しています。そのため、噂が大きくなるごとに、JAKIMが噂を否定したり、マクドナルドがメディア対応を行ったりしています。

これは、ムスリムの皆さんが、ハラールを非常に重要と考えている事の証だと、私は考えます。身近に慣れ親しんでいない食品、例えば、初めて見る海外企業の食品やレストランに対しては、経験的にハラールかどうか判断できません。その為、慎重になるのではないでしょうか。

マレーシアで販売されている韓国製辛ラーメンは、ハラール認証を取得しています。しかしながら、今回の騒動によって、「本当にハラールなの?」という疑念が、今回の記事とともに消費者の間でシェアされ続ける可能性があります。販売量に関しては何とも言えませんが、長期に渡ってブランド価値が低下する可能性は、十分に考えられます。

ハラールではなくコンプライアンス問題と考える理由

2017.06.22追記

今回の騒動を見ていて、もう少し補足が必要だと感じました。今回の騒動をコンプライアンス問題と考える理由を、もう一度整理してみたいと思います。


朝日新聞デジタルよりも詳細に書かれているこの記事も、多くの方に読まれているようです。

この記事によれば、

  1. 2017年6月19日、韓国・聯合ニュースは、インドネシアに輸出された韓国のラーメンから、豚のDNAが検出され、大きな問題となっている。
  2. インドネシアの食品医薬品監督庁(BPOM)は18日、4種の韓国ラーメンの輸入許可を取り消し、流通する製品の全量回収を指示した。
  3. インドネシア国内で流通している韓国製ラーメンの一部から豚のDNAが検出され、それらの製品には「ハラール食品ではない」と示す表記がなかった。
  4. 今回摘発されたラーメンの一部は、以前韓国国内でハラール認証を受けた製品だった。

と述べています。

理由1 インドネシアでは豚由来成分含有食品が合法的に流通可能

インドネシアでは、豚由来成分含有商品の流通は、一定の規制をクリアすれば可能です。今回のこの4商品は、適正な表記をしてあれば問題ありません。

理由2 豚由来成分含有は販売ライセンス取得時に判明

この記事では、突然発覚したかのように書いてあります。一方、ジャカルタ発のBPOMの発言を見る限り、販売ライセンス取得時に発覚したようです。

理由3 適切な対応のための猶予期間

BPOMは、豚由来成分含有が表記されていないため、回収等の対応を求めています。そのための猶予も与えています。しかしながら、輸入業者が対応しなかったのです。

実際にBPOMが、今回の販売ライセンス取消の告知をしたTwitterの一枚を見てみましょう。


輸入販売の際に必要なラベリングが、パッケージの表面に貼付されています。この1枚でしか確認できないのですが、確かに韓国向け製品を輸入した物の様です。ハラール認証マークもありません。

  1. この商品は韓国からの輸入商品⇒ 豚由来成分が入っている可能性あり
  2. 成分表にない豚由来成分が入っている事が発覚⇒ サンプル検査をさせた?
  3. 商品を回収、豚由来成分含有表示等を要求⇒ 消費者向けの適切な対応を要求
  4. 輸入業者に、対応の猶予を与えたが対応せず⇒ 販売ライセンス取消

BPOMは、このような手順を踏んだわけです。食品を監督する省庁としては、輸入業者に十分に配慮した対応をしています。この輸入業者も、成分を隠して故意にハラール商品と偽ったわけではなく、監督省庁の指導に従わなかったのです。真摯に対応していれば、販売ライセンスが取消されることは無かったでしょう。

偽ハラール・辛ラーメン騒動の解りにくい点

今回摘発されたラーメンの一部は、以前韓国国内でハラール認証を受けた製品だった。
出典:インドネシアで韓国のラーメン4種が販売中止に、韓国の「ハラール食品」に対する疑念高まる=韓国ネット「他国の文化をなめてかかるからいけない」

今回の騒動では、「ハラール認証を受けた商品に豚DNAが入っているなんて・・・」のこの部分が、注目されたのだと思います。これが真実だったとしても、ハラール認証制度の視点から考えれば、偽ハラールとまでは言えないと考えています。

韓国のハラール認証がインドネシアで通用しない可能性

世界的に見てハラール認証は、制定された基準に則って生産される製品に対して、物的証拠に基づいて監査され、ハラールであると確認された製品に対して付与されます。そのため、ハラール認証を行う組織や団体ごとに、それぞれの基準と監査方法を持っています。数年に一度の更新監査も必須です。

そのため、韓国からインドネシアに輸出する場合、韓国のハラール認証を取得していても、ハラール商品として流通できない可能性があります。韓国で取得したハラール認証がインドネシアのハラール認証と相互認証していなければ、ハラール商品としての販売ライセンスは取得できません。インドネシアにハラール商品として輸出する場合には、インドネシアのMUI認証か、MUIと相互認証している団体のハラール認証が必要です。

ハラール認証団体の監査レベルに大きな格差

マレーシア、インドネシア、タイ等の東南アジア諸国では、ハラール認証制度の基準制定、監査等の運用に、国が関わっています。ハラール認証の考え方は、HACCPをモデルにつくられており、文書と物理的証拠に基づいた監査が行われています。

韓国や日本では、民間の任意団体が主導しています。このため、複数の認証団体が有り、団体間のレベルの差も大きいです。日本人は認証と聞くと、非常に公的な物と感じます。しかし実際には、誰でもハラール認証を付与できるのです。法的に規制されていない、私的制度だからです。日本には、東南アジアと同様の監査を行っている団体もあれば、ほとんど監査していない(できない)団体もあると聞いています。

同一商品にハラール認証商品とそうでない商品がある可能性

日本に定住しているムスリムは、20万人から多くても40万人と言われています。韓国や日本のハラール市場は、ニッチ市場なんです。韓国や日本の食品製造企業の多くの主な顧客は、ムスリムではありません。

そのため、食品製造業者が、同一ブランドや商品名でハラール認証を受けた商品とそうでない商品の両方を、製造する可能性があります。今回問題の辛ラーメン、キットカット、マクドナルド、ケンタッキー等多くの企業が、国と地域で使い分けています。

辛ラーメン騒動が偽ハラール問題になるとしたら?

今回の辛ラーメン騒動が次のような事態であれば、国際間偽ハラール騒動になったと思います。

  • 輸入業者が、テスト用のサンプルと実際の輸入商品を別物にして販売ライセンスを取得する、パッキングリストと違う商品で輸入通関を行う等の故意の工作を行い、ハラール商品として販売ライセンスを取得した。
  • 製造業者が、インドネシアで通用するハラール認証を正式に取得したが、何らかの理由で、故意に中身をハラールでない物に変えて製造、輸出した。
  • 製造業者が、インドネシアで通用するハラール認証を正式に取得したが、何らかの理由で、故意に同一商品名のハラールでない商品を輸出した。
  • 製造業者が、インドネシアで通用するハラール認証を正式に取得したが、更新せず認証が失効した。それを認識しつつ、故意にハラール認証商品として製造、輸出した。
  • 製造業者が、不正な手段でハラール認証を取得し、その製品を製造、輸出した、

このようなことであれば、大問題になったと思います。今回の問題商品の一部が韓国のハラール認証を受けていたとしても、その認証自体がインドネシアで認められていないか、認められていたとしても認証が失効していたか等で、最初から検査対象だったのではと思います。そうでなければ、今回のBPOMの発表にはなりません。

宗教、信条、文化、アレルギー等からの食事制限は、それをしていない人々にはなかなか理解できません。どうしても、想像や憶測で判断しがちです。マレーシアのムスリムの友人達を身近で見ていて、強く実感しています。

このような食事制限は、ハラールだけではありません。ベジタリアン、アレルギー等さまざまな食事制限が、世界には存在しています。東京オリンピックを控え観光立国を目指す日本は、この点について十分な配慮が必要だと感じています。