【現場リポート】ムスリム観光客を迎えるおもてなしとは?
ハラール認証やハラールフレンドリー認証を取得した製品やサービスの開発に、注目が集まっています。このような取り組みは、イスラム諸国からの観光客誘致には欠かせません。このようなハラールフレンドリーに対する日本の取り組みを、実際にイスラム教徒の方はどのように感じるのでしょうか。マレーシアとドバイのイスラム教徒の方とのお話しの中から、日本のハラールフレンドリーへの注意点を探ってみました。
オーストラリアの牛肉はOK でも日本の牛肉はNG
「マクドナルトはドバイでも人気だけど、安心して食べられるの?」
「マクドナルドの牛肉はオーストラリアで生産されているから、安心して食べられるよ。」
「どうして?」
「オーストラリア人はキリスト教徒だろ。私達と同じ経典の民だ。だからきっと大丈夫。でも日本人は仏教徒だろ。だから和牛はハラールの点で心配だよ。」
ドバイのアラブ人の方からお伺いしたお話しです。イスラム教徒の視点からは、キリスト教は宗教的には同質、仏教は異質と捉えているようです。
イスラム教徒の私がOKと言えばみんな安心
海外から観光に来るイスラム教徒が、日本で最も困る事の一つが食事です。実際のお皿に盛られた料理を見ても、どれに豚肉が入っていないのかを経験的に判別できないのです。 多宗教国家のマレーシアのイスラム教徒は、初めて見る料理を食べるかどうかを判断する場合、店主がイスラム教徒だったら安心して食べるそうです。日本の観光地では店主のほとんどが日本人ですから、この方法は使えません。
日本へのイスラム教徒の団体ツアーを主催しているイスラム教徒の旅行会社社長に、この問題をどのように解決されているかお伺いしました。
「ハラール認証マークがついていることよりも、イスラム教徒の私が豚を使っていないと確認し大丈夫と言うことによって、皆が安心して食事ができる。」
頭ではハラール認証を取っているので大丈夫と理解しても、心理的には不安があり、イスラム教徒による一言が安心に繋がっているということのようです。
イスラム教徒の不安を理解したおもてなしが必要
かれらのお話しからすると、ハラール認証やハラールフレンドリーの認証を取得することは、あまり意味のないことなのでしょうか?私はそうは思いません。
ハラール認証やハラールフレンドリーの認証を取得することは、日本人のイスラム教徒の観光客へのおもてなしのうち、最も重要な事の一つでしょう。しかし、それを取得すればそれで終わりということではありません。日本観光で楽しい半面心の中では不安を持ちながら旅行している事を、私達が理解しておもてなしをすることこそが、最も重要なのです。
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ハラール認証やハラールフレンドリーの認証は、日本人から見ると商業的な認定制度の様に見えます。イスラム教徒の方から見れば、それは心の問題なのです。日本で起きた食品偽装の問題のように、謝って返金すれば済む問題では無いのです。ハラール認証に関して同様の事件が一度でも起これば、イスラム教徒の方からの日本への信頼は、大きく損なわれるでしょう。私も含めてイスラム諸国とビジネスを行う方は、この事を強く意識しておく必要があるのです。