あと1年? 2015年にアジア諸国の経済成長が終わる?
海外進出成功のためには、どの国を進出先に選ぶのかが、非常に重要です。同じ地域にあっても、社会状況や経済状況は、国ごとに違います。海外進出先の国の社会状況や経済状況を知る指標に、人口があります。人口の推移を過去から未来に追うことにより、その国の社会状況や経済状況を、正確に予測できるのです。この人口予測から、2015年に、アジアで成長を続けている国々が、新しい社会経済状況の局面に入ると予測されています。
海外進出で注目すべき人口予測
どの国に海外進出すべきかを検討する上で、その国の将来の経済発展状況は、非常に重要なポイントです。新年を迎えると、経済評論家がその年の経済予測を行います。皆さんもご承知のように、その多くが当たりません。そのため、経済予測なんて意味が無いと考えている方も多いようです。
しかし、統計の世界では、人口予測とそれにともなう経済状況予測は、大きく外れない事で知られています。そのため、海外進出を検討する際にその国の人口予測に注目することは、海外では常識となっています。
経済成長をもたらす人口ボーナス
人口ボーナスとは、「総人口に対する生産年齢人口の割合の上昇が、その国のGDPの上昇をもたらす」という経済学の理論です。人口ボーナスは、合計特殊出生率、老年人口の割合、労働人口、総人口等によって、定義されます。
人口ボーナス期にある国の多くが、大きな経済成長を成し遂げています。この人口ボーナス期が、中東、マレーシア、インドネシア等のイスラム諸国で今後も継続する事が予測されています。そのため、イスラム市場進出が、世界的に注目されているのです。
この人口ボーナス期は、各国一度きりしかありません。人口ボーナス期になり経済成長が進むと、少子高齢化が進展します。その結果、人口ボーナス期が終焉すると、労働人口と総人口が減少に転じます。その結果、経済成長は鈍化してしまうのです。
2015年 アジア諸国で人口ボーナス期が一斉に終わる
人口ボーナスの時期 *1
人口ボーナスの始点 | 人口ボーナスの終点 | 国名 |
1930-35 | 1990-95 | 日本 |
1960-65 | 2010-15 | 台湾 |
1965-70 | 2010-15 | 韓国、香港、シンガポール、中国、タイ |
1965-70 | 2015-20 | ベトナム |
1965-70 | 2020-25 | インドネシア |
1965-70 | 2030-35 | マレーシア |
1960-70 | 2035-40 | インド |
1960-65 | 2040-45 | フィリピン |
この表は、アジア諸国の人口ボーナスの開始時期と終焉時期を一覧にしたものです。
どの国も、日本の経済成長を追いかけるように、1960年以降に人口ボーナス期に入りました。そして、2015年には、韓国、台湾、香港、シンガポール、中国、タイの人口ボーナス期が終焉すると、予測されているのです。
人口ボーナス期が終了するということは、労働人口の増加が減少に転じる時期がすぐそこまで来ているという事です。アジアでは、高度成長から低成長に社会経済構造が変化する時期が、今まさに始まるのです。
人口ボーナスの終焉は、所得上昇の終焉
人口ボーナスに関連して、もう一つ知っておくべきポイントがあります。人口ボーナス期が終焉すると、その後の一人あたりGDPは、人口ボーナス期のような大きな伸びを見せなくなります。
人口ボーナス終了時の1人当たりGDP *2
人口ボーナスの終わる年 | 国名 | 1人当たりGDP |
1995 | 日本 | USD23,504 |
2015 | 韓国 | USD27,724 |
2015 | 香港 | USD32,040 |
2015 | シンガポール | USD30,391 |
2015 | 中国 | USD9,722 |
2015 | タイ | USD8,720 |
2020 | ベトナム | USD4,763 |
2025 | インドネシア | USD6,207 |
2035 | マレーシア | USD15,571 |
2040 | インド | USD7,758 |
2045 | フィリピン | USD12,289 |
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2015年に、アジアの多くの国で人口ボーナス期が終わると予測されていることは、海外進出を検討される方が、絶対に知っておくべき事です。経済成長を続けたアジアが、新しい局面を迎える時期が来たのです。
- 人口予測は正確性が高く、今後の経済状況をも予測する。
- 人口ボーナス期には、多くの国が経済成長を成し遂げる。
- 人口ボーナス期が終わると、GDPの伸びは鈍化する。
- 2015年に、アジア諸国の多くで、人口ボーナス期が終わる。
人口ボーナス期の終焉によって、その国が海外進出に適さない国になる訳ではありません。社会経済状況の変化にともなって、顧客層や需要に変化が生じるということなのです。
この点を見誤ってしまうと、海外進出で大きな失敗をする可能性が、高まります。海外進出を検討されている方は、進出予定国の人口予測について、確認してください。
参考:人口ボーナスとは
*1 出典 「老いてゆくアジア」大泉啓一郎著 2007 中公新書
*2 出典 「人口が変えるアジア」小峰 隆夫 2008
http://www.asianhumannet.org/db/datas/ADM080128Presentation-j.pdf (削除されたようです。)