マレーシア人がECよりショッピングモールを好む三つの理由

2017-06-26マレーシアマーケティング

マレーシアの日刊紙のサイト「The Start Online」に、「マレーシア人はオンラインショッピングで買わない(Malaysians not buying into online shopping)」と題した記事が掲載されました。

自らのショッピングモールでの体験や知り合いの話を聞いていると、みんなショッピングモールが好きです。マレーシア人のショッピングモール好きは、マレーシアの社会インフラ、気候、文化等が複雑に絡み合った結果です。このエントリーでは、マレーシア人のショッピングモールでのショッピングが好まれる要因について、明らかにします。

マレーシア人がショッピングモールを好む三つの要因

マレーシア人の消費行動において、ショッピングモールは大きな意味を持っています。かれらがショッピングモール好きな理由には、三つの要因があると考えられます。

  • インフラ要因 : マレーシアの車社会化。オンラインショッピングインフラの未整備。
  • 文化的要因 : マレー系、中華系ともに家族や友人との時間を大切にするマレーシアの民族文化
  • 気候的要因 : 最低気温25度、最低湿度70%を下回らないマレーシアの熱帯雨林気候

マレーシアの自動車保有率は93%

2014年の国際的な調査会社のニールセンの調査によれば、マレーシアの自動車保有率は93%で世界第三位、複数所有している世帯の比率では世界1位です。

これに、多数のオートバイが加わります。クアラルンプールで生活すると、車が無いと非常に不便な事を実感します。クアラルンプールでは公共交通機関の整備が着々と行われていますが、まだ不十分です。そしてこれらの副作用が、クアラルンプール名物の一つとも言われている朝夕の渋滞です。平日の午前8時から9時と午後5時から7時頃まで、そして、休日のショッピングモール近辺やイベント会場等の渋滞は、特に酷いです。

クアラルンプール車社会の課題は渋滞と駐車場

クアラルンプール在住の中間層以上の多くは、KLCCやブキットビンタン等の市内中心部ではなく、車で20分から1時間程度(渋滞が無ければ)郊外に開発された地区に住んでいます。このような住宅地区では、その地区ごとに大型ショッピングモールが存在しています。観光や視察ツアー等で日本人が良く訪れるブキットビンタンやKLCC地区にも、PavilionSuria等の有名高級ショッピングモールが存在します。クアラルンプール国際空港の近くには、日本でも有名なMitsui Outlet Park KLIA Sepangがあります。

しかし、私の友人達は、自分が住んでいる地域から離れたショッピングモールまでわざわざ買物に行くことは、理由が無ければあまり無いとのことです。なぜなら、渋滞が発生した場合に時間がかかります。また、クアラルンプール中心部では駐車場を見つけることが困難だからです。

このようなことから、商品購入や休日のレジャー等は、どうしても自らが住んでいる近郊のショッピングモールが中心となってくるのです。

オンラインショッピングは信頼性が低い?

日本人にとってオンラインショッピングは、快適そのものです。何時でも、自宅にいながら、価格も安く。お店によっては購入の当日に受け取れる。こんな利便性の高いサービスが提供されている国は、多くありません。

マレーシアは、GDP水準が中進国になって20年以上経過しています。それでもオンラインショッピングの利便性は、日本の様には高くありません。例えば、代引きは今でも一部地域と業者でしか利用できません。マレーシア、インドネシア等では、詐欺的な業者(前金を受取、商品を送らない。違った商品を送る。等)が、まだ多く存在しているようです。運良く良心的なオンラインショッピング業者から購入できても、日本の様な安全かつ正確な配達は、まだ期待できません。

以前に話を聞いた中華系の若い女性は、「友人が利用して問題が無いお店や、知り合いがオーナーのお店以外では、買わない。以前にオンラインショッピングを利用して、トラブルに遭遇したから。」と話してくれました。マレーシアでは、オンラインショッピングの信頼性は、まだ高くないと考えられます。

お一人様はありえない?家族や友人を大切にするマレーシア人

以前にマレーシアで繁盛している日式レストランを考察したエントリーを掲載しました。

みんなで楽しく」が繁盛店の一つの要因でした。

マレーシアやインドネシア人と日本人を比較すると、成人後であっても両親、兄弟、親類等と家族全体で過ごす時間を多く取っています。友人達やパートナーと、外出や食事等も良く楽しんでいます。日本人のようにお一人様は、まだまだ少ないのです。

歩くなんて考えられない!! マレーシアは熱帯ですから。

マレーシアに来て最初に驚いた点の一つが、非常に短距離でもマレーシア人が歩かない事です。ある郊外のバス路線に、徒歩5分程度の距離で、コンドミニアムとショッピングモールがあるんです。ショッピングモールのバス停で見ていると、みんなが、その徒歩5分の距離の移動の為に、バスを15分以上待っている事があるんです。

歩いて5分の距離に15分以上バスを待つ理由は「暑い」からです。35度以上になる日中に外を歩くことは、論外なのです。歩く速度も、日本人と比較すると非常にゆっくり歩きます。日本人と同じペースで歩くと、アッという間に汗だくになってしまいます。

ショッピングモールはマレーシア人にとって手軽で合理的なレジャー

ここまでの考察から、マレーシア人がショッピングモールを好む理由が、明らかになってきました。

  • 冷房が効いている。多くのショッピングモールが午前10時から午後10時までオープンしています。最も暑い時間に涼しい場所ですごす事ができます。自宅の電気代も節約可能です。
  • 一日居ても飽きない。郊外にある大型のショッピングモールは、1日で見て歩くことができないくらい多種多様なお店が入っています。カラオケ、映画、ボーリング、スケートリンク、ゲームセンター、スーパー、祈祷室等、家族や友人達と一日楽しめます。
  • 食べるお店に困らない。KIOSK、コーヒーショップ、フードコート等。一日5回食べると言われるマレーシア人にとって、ショッピングモールは食べる物に困らないのです。
  • 駐車場が完備されている。自分の車で移動しても、不便が無い。

このように、マレーシア人にとってショッピングモールに行くことは、家族や友人と一緒に楽しめる最も手軽で合理的なレジャーの一つと言えるのです。

マレーシア人がオンラインショッピングよりショッピングモールを好む三つの理由

マレーシア人がショッピングモール好きな理由を検討していくと、かれらがオンラインショッピングよりショッピングモールでのショッピングを好む理由が、明らかになってきます。

  1. ショッピングモールはオンラインショッピングより利便性が高い。自分の身近な生活空間で、今すぐ商品を手にできる。
  2. ショッピングモールはオンラインショッピングより信頼性が高い。その場で商品を確認できる。実在のお店から購入できる。
  3. ショッピングモールはオンラインショッピングより娯楽性が高い。家族や友人と一緒にショッピングを楽しめる。

今回の検討から、マレーシアの社会インフラ状況、社会文化、気候等が、マレーシア人をショッピングモール好きにしている事が解ります。かれらにとって、自分が住んでいる近隣のショッピングモールでのショッピングが、合理的で楽しい購買行動と考えることができるのです。

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近年、越境ECの注目度が高まっています。現地法人や代理店を作る必要も無く、輸入通関、輸送コスト等の問題も解決しやすい、国内に居ながらにしてできる海外進出です。しかしながら今回明らかになったように、マレーシアのような中進国でさえ、オンラインショッピングよりショッピングモールが好まれるのです。越境ECやオンラインショッピングの領域でも、現地最新事情に基づいたマーケティングやコンサルティングは、必須なのです。