【インバウンド】旅館のムスリム対応 絨毯とキブラは必要?

2018-07-22コンサルティング,ムスリムインバウンド

7月26日に、セミナー「マレーシア、インドネシア、東南アジアマーケットの今」を開催させて頂きました。


大阪だけでなく東京の会場をネットで繋ぎ、ご参加を頂きました。ご参加頂きました皆様、お忙しい中、わざわざお越しいただきまして頂きましてありがとうございました。今回のセミナーでは、マレーシアとインドネシア市場を中心としたASEAN市場について、私が見て感じた現地の生の情報を、共有させていただきました。参加者の方からは、幾つかのご質問を頂きました。今回は、宿泊施設のハラール対策についてのご質問について、共有したいと思います。

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私のムスリムインバウンドへの取組

現在私は、マレーシア、インドネシアを中心に東南アジアから日本への訪日旅行の主催に、インドネシアのパートナーとともに取組んでいます。

現地のムスリムツーリストのニーズにフォーカスした取組、ムスリムでない日本人とマレーシアとインドネシアの現地ムスリムという物珍しいチーム、お客を握っている現地旅行代理店への地道な営業等からマレーシア、インドネシア、ブルネイを中心に独自のネットワークを構築しています。現地大手企業の様に数は多くありませんが、小規模の個人旅行、ビジネストリップ、企業トップ等のVIPツアーを実施させていただきました。私たちのツアー内容が評価されて、メッカツアーを実施する大手有名旅行会社のツアーを、請け負わせて頂けるようになりました。

国内では、地方自治体等のご依頼で視察ツアーを実施、インバウンド企業向けのハラール対応のセミナー、ムスリム消費者を対象としたマーケティング調査、カンファレンス講師等を行わせていただきました。

宿泊施設等で祈祷室、祈祷用絨毯、コンパス、キブラの用意は必要ですか?

宿泊だけに焦点をあてれば、新たに用意しなければならない物は無いと感じます。ムスリムインバウンドで話題となる三種の神器。祈祷室、祈祷用絨毯、コンパス(キブラ)ですが、宿泊施設では必須ではありません。

宿泊施設で祈祷室を用意したというプレスリリースを見たことがあります。通常、お祈りの時間は、部屋に滞在しているか観光の真最中です。お祈り自体は、綺麗な場所であればどこでも可能です。ホテル滞在時には、皆さん各自の部屋で行っています。

祈祷用絨毯ですが、持参されて来る方もいます。清潔なものであれば大丈夫なので、他の物で代用される方もいらっしゃるようです。

メッカの方向を示すコンパスや部屋の天井等にあるキブラですが、準備しなくても大丈夫です。現在のムスリム旅行者のほぼ全員がスマホを持っています。スマホには、GPSとコンパスを使って現在位置からメッカの方向を示し、お祈りの時間を表示するアプリがあります。殆どの方がそれをインストールしているので、コンパルやキブラが無くても別段困ることはありません。

多くの日本の宿泊施設は、掃除も行き届いています。シーツやタオル等もシッカリと交換されています。宿泊に限れば、ムスリムツーリストを受け入れるために設備を改装し新たな設備を用意する必要は、特に無いと考えています。もちろん、祈祷室、祈祷用ジュウタン、コンパス、キブラ等を準備できるに越したことはありません。顧客サービスの一環としてこれらを準備されれば、リピートの獲得やSNS、口コミ等での高評価に繋がる事は言うまでもありません。

お風呂は配慮が必要かも

ムスリムツーリストを受け入れる場合、お風呂については配慮が必要です。共同浴場しかないような民宿や民泊の場合、男性でも人前で全裸になることを嫌う方がいらっしゃるので、一定の時間貸切にするなどの配慮をされたほうが良いでしょう。

ムスリムツーリストに限らず海外ツーリストの場合、湯船の使い方を知りません。そのため、シャワーの設備はあった方が良いです。また、湯船の使い方を事前に教える必要が有ります。

ハラール対応の食事の提供については注意が必要

皆さんもご承知のように、ムスリムは宗教的に、豚とアルコールの摂取ができません。単純に豚肉を食べないだけでなく、豚肉の調理に使った調理器具や食器の使用も忌避されています。そのため、通常の宿泊施設の調理場で調理された料理は、ほぼ口にできないと考えられます。

宿泊施設がムスリムツーリストに対してハラールな食事を提供すると宣言した場合には、宿泊施設がハラールであることを担保しなければならないのです。そのため、食事を提供するのかどうかは、真剣に検討しなければなりません。

確実にできるハラール対応を行うことが重要

もしトラブルが露見した場合には、インターネットを通じて瞬時に拡散されてしまいます。また、その情報はネット上に永遠に残るのです。そのため、必ずできることに限定してサービスを提供することがハラール対応の肝だと、私は考えています。

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豚肉やアルコールを摂取しないという習慣の為、ムスリムツーリストを受け入れるのが難しいと言われる方がいらっしゃいます。しかし海外から見れば日本人だって、少し前までは「生の魚を食べる野蛮な習慣を持っている」人々だったのです。

イスラム教徒と言っても私たちと同じ人間です。私たちとは少し異なった文化、習慣を持っているだけです。日本に旅行に来る目的は、私たちが海外旅行する目的と全く同じです。その点を理解して、偏見なく受け入れることができれば、どの宿泊施設でもムスリムツーリストの受入はできると、私自身は考えています。